合成洗剤と石けんの長所、短所を比較する
石けんが良いとか、合成洗剤が悪いと言う前に、
石けんとは、どういうものか?合成洗剤とはどういうものか?
といったことについて、正確な知識を持つことが必要です。
「石けんと合成洗剤の違い」その1〜3まで、石けんとは、合成洗剤とはどういうものなのか、使われる原料から性質、良い点、悪い点などを客観的、科学的に説明してきました。ここで石けんの長所と短所を整理したいと思います。
石けんの長所
・水の中の生物への影響、毒性が少ないこと
・人にもよりますが一般的に言って、肌への刺激が少ないこと
石けんの短所
・石けんカス(金属石けん)ができること
・原料の消費量が多いこと
・一回の洗濯に使う量が多いこと
・有機物による汚染(有機汚濁)が大きいこと
合成洗剤の長所
・原料の消費量が少なくて済むこと
・一回の洗濯で使う量が少なくてすむこと
・石けんカスができない(または非常に少ない)こと
・有機物による汚染が少ないこと
合成洗剤の短所
・水の中の生物への毒性が強いこと
・製品にもよりますが、一般に肌への刺激が大きいこと
こうして見てみると、それぞれの長所が短所に、短所が長所になっていることに気づくと思います。石けんの短所のところで「石けんカスができること」をあげましたが、これは見方によっては長所にもなり得ます。石けんカスとは、石けんと水の中のカルシウムイオン、マグネシウムイオンが結びついてできた水に溶けない物質のことです。金属石けんとも言います。
「石けんカスは、衣類の黄ばみの原因になったり、洗濯機内の汚れやカビの原因になります。環境中に排出されると、吸着性が高いためにいろいろな汚れと結びついて下水管などにこびりつき、分解されにくくなります。」と石けんカスについては前回悪い物として書きました。が、石けんを使う人間にとってはやっかいな石けんカスも魚など水中の生物にとってはありがたい存在なのです。
ご存知のように魚など水中の生物の多くは、エラ呼吸します。エラはたいへんデリケートで、石けんや洗剤のような界面活性剤が吸着すると働きが悪くなり、酸素を取り込めなくなってしまいます。わずかな量なら問題ないのですが、水中の界面活性剤の濃度が一定量を超えると魚が酸欠で死ぬなどの被害が発生します。
石けんは、環境中に排出されても水中のミネラル分と結びついて石けんカスになってしまう割合が高いので、水中の界面活性剤の濃度はあまり上がりません。だから生物への影響は、合成洗剤よりずっと少なくてすむのです。一方合成洗剤は石けんカスができないので全部水に溶けてしまい、石けんよりずっと高い魚毒性を発揮することになります。つまり水に溶けやすいので簡単に界面活性剤の濃度が上がり、魚などのエラの働きを阻害して殺してしまうのです。
魚が死ぬ毒性、魚毒性の試験を蒸留水で行うと良くわかります。
蒸留水に金魚を入れ、石けんを溶かします。すると金魚は、合成洗剤より低い濃度でも死んでしまうことがあります。蒸留水はミネラルを含みません。石けんカスはできず、すべて水に溶けてしまうため、毒性が強く出るのです。
しかし、自然界では蒸留水が川や湖などに存在することはあり得ません。一般的に言って石けんは合成洗剤より魚など水生生物にとっては毒性が低いと考えていいと思います。
大げさに言われる水中生物への毒性
魚が死ぬからといって、それが直ちに人体に影響が出るということではありません。説明したとおり、石けんや合成洗剤で魚が死ぬのは、エラの働きが阻害されるからです。ヒトをはじめ地上に住む生物はエラ呼吸はしていません。
「合成洗剤だとわずかな量でも魚が死ぬ」というような話を聞いて、自分の体にも危険であるかのように思って恐れる必要はありません。
合成洗剤の水中の生物への影響を、「石けんは、石けんカスができて魚が食べるが、合成洗剤は魚が食べると死ぬ」とか「合成洗剤はダイオキシン並みの毒性」と大げさに言い立て消費者の不安をあおる情報が一部の石けんメーカーや、石けん推進グループから流されています。石けんは確かに水中の生物への影響は少ないです。が、だからと言って石けんの推進をするために合成洗剤の毒性を大げさに言い立てるのはどうでしょう。何度も言いますが、合成洗剤で魚が死ぬのは、エラ呼吸ができなくなるためです。この一番大切なことを説明しないで、「魚が死ぬ」ことだけを強調して消費者の不安をいたずらにあおり、人体への影響や毒性を連想させる行為は、営業活動そして運動のあり方としては間違っていると思います。
最近、石けんの原料消費量の多さや一度の洗濯で使う量の多さが石けん、洗剤関連の本やインターネット上で指摘されるようになりました。この点に関しては素直に物事を考えれば認めざるを得ない事実です。「この点で争っても合成洗剤には勝てない」と思ったのか、最近はやたらと合成洗剤の水中の生物への影響を問題にする情報が、石けん運動の人たちから発信されています。
「合成洗剤は、水中の生物への毒性が強く石けんは合成洗剤よりずっと毒性が弱い(ゼロではない)」というのは科学的な事実です。でもそれが直ちに人体への毒性が現れるということにはならないということも事実です。
昔は合成洗剤が原因で魚が大量に死ぬということがあったかも知れません。でも、今そんなニュースは聞いたことがないのではないでしょうか?70年代にABSが使われなくなり、80年代にはリンも合成洗剤の成分からなくなりました。石けんカスができないため、依然として合成洗剤は魚毒性の点で石けんにはかないません。とは言っても、今の日本は都市部では下水道が普及しているため洗剤の垂れ流しにはなりません。下水処理場で合成洗剤が処理仕切れないのは、石けん運動の人たちが言うように事実です。でも、魚が死ぬほどの濃度で川に流されているわけでもありません。もちろん、魚たちにとってはゼロにしてもらった方がいいでしょう。でも、ゼロにするために「石けんを使おう」と短絡的な考え方をするのはどうでしょうか。
石けんは油脂から作られます。食用にもなる牛脂、ココナツ油、パーム油などを使います。これからもし、石けん運動がとてもうまく成功し、大部分の家庭で粉石けんを使うようになったとして、原料供給は大丈夫でしょうか?
石けんは、合成洗剤の数倍の原料を消費します。合成洗剤は今はパーム油から作られるものが多いですが、原料が足りなければ石油からも作れます。
油脂を大量に消費する石けんが、今の数十倍、数百倍普及したとしたら、必ず原料不足になります。価格が上がり、食用にもなる油脂を日本が途上国の人たちから金の力で奪うことになりかねません。油脂の増産も始まります。今食用、原料用として生産が拡大しているのはパーム油です。アブラヤシというヤシの実から採れる油です。アブラヤシはマレーシアなどのプランテーションで作られます。プランテーションを作るため、広大な熱帯雨林が今まで破壊されてきました。熱帯雨林には多様な生態系があります。そこを生活の場としている先住民たちも住んでいます。
合成洗剤は、確かに魚への毒性は強いです。でも今の汚染状態は魚が死んでしまうほどではありません。日本の魚たちに気持ちよく過ごしてもらうために石けんを推進し、原料の不足を招き熱帯雨林を破壊し、無数の生物の住処と貴重な生態系を奪うことなど許されることではありません。
知り合いの女性がフィリピンに行ったとき、「石けんを作るための原料を得るために熱帯雨林を破壊しアブラヤシ(ココヤシかもしれない)のプランテーションを造成している」という話を聞いたと言います。
だから彼女は、「パーム油で作った石けんは絶対に買わない」といいます。
家では「トップとか普通の合成洗剤を使っている」といいます。
環境のことを本当に真剣に考えるのなら、こんな商品選択の仕方もあり得ます。
合成洗剤と石けんの環境への影響、毒性などを公平に科学的、客観的に検証した
当会オリジナル冊子「合成洗剤・石けんにまつわる7つの誤解」をぜひ、お読みください。一般の合成洗剤への恐怖感を煽る本とは反対に、科学的なデータや情報により、合成洗剤への安心感を持っていただけるように書いた本です。
冊子の「あとがき」を読むことができます。
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アタックが悪い洗剤ではないことがわかっても、なんとなくイメージが悪くて使うのをためらう人がいるのではないでしょうか?
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