進化した合成洗剤アタック
悪い洗剤の代名詞のようになっているアタック。
花王もなぜか反論しませんが、アタックはハイテク技術を使って作られた、
環境に優しい洗剤です。
「アタックやトップのような合成洗剤」と、悪い合成洗剤の代表のように世間で言われているアタックですが、実はとても環境のことを考えて作られた洗剤です。
現在販売されているアタックは、2001年4月に大幅改良されたものです。それまでのアタックや他のコンパクト洗剤とどう違うのか、読売新聞科学部が書いた「地球と生きる 緑の科学」という本に詳しく出ています。この本の内容と、アタックの製造元、花王から提供していただいた情報を元に、新しいアタックについて説明していきたいと思います。
初のコンパクト洗剤アタック
アタックが登場したのは、1987年のことです。それまで洗濯用洗剤というのはかなり大きな物で、身近なもので言うとビデオデッキより一回り大きいくらいの大きさでした。あまりにも大きいので「洗剤を買うと他の物が買えない」というのがその頃の主婦の悩みでした。
昔の合成洗剤がなぜそんなに大きかったかというと、水に良く溶けて、しかも湿気の高い季節にも粉が固まらないような工夫がされていたからです。
コンパクト洗剤が登場する前の洗剤は、粒子が中空の構造でした。中空の形を保ち、サラサラにするために大量の硫酸ナトリウムなどの粉末化剤や固化防止剤などが入っていました。
当時の標準使用量は、水30リットルあたり40グラム。日本発の粉末合成洗剤が発売された1951年には150gだったと言いますから、それでもかなり使用量を削減する方向で、洗剤メーカーは製品開発を続けてきたことがわかります。この頃の合成洗剤に使われていた界面活性剤は、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)が主体です。ABSは洗浄力は強いものの、分解性が悪く、川などに流されると泡だってしまい、なかなか泡が消えません。合成洗剤による河川の汚染が世界的に問題となりました。ABSを改良して、より微生物が分解しやすくし、環境により優しい界面活性剤として開発されたのが、LASです。日本では71年に、ほぼすべてLASに切り替わり、現在ではABSは使われていません。
ABSと並んで問題にされたのが、「トリポリリン酸ナトリウム」というビルダーです。金属封鎖剤、PH調整剤などいろいろな用途に使われていましたが、リンが入っているために、湖沼などの藻類や微生物などを大量に繁殖させてしまう、富栄養化現象が問題とされました。80年代には、洗剤の無リン化が進み、ゼオライトなどより環境への負荷が少ないものに変えられました。
1951年に現在あるような粉末の合成洗剤が日本で発売されてから80年代までに、合成洗剤は大きな進歩をしています。当初150gだった使用量が、わずか40gに。ABSがLASに変わりました。無リン化がほぼ100%になりました。そして、1987年、花王から画期的な洗剤が発売されます。アタックです。
アタックは、日本初のコンパクト洗剤です。「スプーン一杯で驚きの白さに」のキャッチフレーズで売り出されたこの洗剤は、文字通り付属の計量スプーン一杯で洗うことができました。アタックの登場で、洗濯一回あたりの標準使用量は、40gから一気に25gまで減りました。大きくて4kg以上あった洗剤の箱が、現在のような小型で持ち運びのしやすい大きさのものに変わりました。
洗剤がコンパクト化できたのは、洗剤の粉末化技術が進歩したことと、洗剤粒子の中空部分を少なくして高密度化したからです。これにより、従来の2.5倍のかさ密度になっています。ビルダーの技術や、新しい酵素も開発され、漂白剤などとも組み合わされることで、洗浄力を高めました。
よくコンパクト洗剤は、濃縮されているからコンパクトにできるのだと言われますが、ちょっと違います。小さくなっても界面活性剤の割合は30%程度。粉石けんと比べたらはるかに低い濃度です。小さくできたのは、濃度を高めたのではなく、洗剤全体の密度を高める技術の進歩のおかげです。
アタックの発売後、他のメーカーもコンパクト洗剤の販売を開始し、現在売られている洗剤は、すべてコンパクト洗剤になっています。
なぜか花王はぜんぜん宣伝していませんが、コンパクト洗剤を開発したのは、環境への負荷の低減を目指したからです。アタック登場後は消費者の間に、従来コップなどで大雑把に計っていた洗剤を、しっかり計量スプーンで計る習慣が身に付き、使いすぎを防ぐことができるようになりました。
また、洗剤をコンパクト化したことは、ゴミの削減や製造、輸送などに使われるエネルギーの削減にもつながりりました。省エネルギー、そしてCO2の削減にも効果があります。
さらに進化したアタック
2001年4月、花王は13年ぶりに大幅に改良したアタックを売り出しました。水に溶ける速度は従来よりも5倍速く、洗浄力は20%アップ。界面活性剤は30%減。という画期的な洗剤です。
開発の背景には節水や省エネのことを考えた、洗濯機の進化がありました。1993年から2000年の間に洗濯機のサイズは38%大型化する一方で使用水量は58%、洗濯時間は58%、消費電力は51%までに減りました。より少ない水や電力で、より多くの洗濯物を洗えるように、洗濯機が変わってきているのです。そのため洗剤には、すばやく水に溶けて洗浄力を発揮することが求められるようになりました。
環境への配慮が求められる中、花王は新しいアタックを開発することにしました。
新しいアタックには、洗剤粒子の真ん中に直径280ミクロンの中空部分が設けられました。水に溶かすと洗剤粒子が水に溶ける際に発生する溶解熱で、中の空気が膨張し、殻を内部から押し壊して一気に溶けます。溶解速度は、従来の5倍も早くすることが出来るようになりました。
新しいアタックには、他にも従来とは違う製造方法が取られています。
従来の合成洗剤は、界面活性剤とビルダーを液体状にして混ぜた物を、霧状に噴射して作ります。乾燥させてできた洗剤粒子は、隙間が多く不均一なため、3、4粒を押し固めて、直径400〜500ミクロンの粒子にコンパクト化していました。
新しいアタックは、まずビルダーだけを噴霧して粒子を作ります。すると、中空部分を持ち、肉厚で均一な大きさの球状の結晶粒子ができます。そこに液状の界面活性剤をしみこませると、細かい穴がたくさんある結晶粒子の中に、界面活性剤がしっかり保持されます。
アタックに使われている非イオン系の界面活性剤「ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)」は、常温では液体のため扱いにくい部分がありました。が、少ない量で洗えて洗浄力が強いという長所があるため、うまく使うことができれば界面活性剤の量を減らし、なおかつ洗浄効果を高めることができます。界面活性剤をしみ込ませた粒子に、濡れを防ぐコーティングをすることで、効果的にAEを使うことができるようになり、界面活性剤を3割も減らすことが可能になりました。
このような洗剤の小型化と、使用量の削減という環境への取り組みは、企業努力として素直に評価して良いのではないでしょうか?
ここまで進化した洗剤を、「合成洗剤」だというだけで排除しようというのは、環境全体を考えた場合、かえってマイナスになりかねません。
少なくとも今の合成洗剤は、粉石けんよりもはるかに少ない量で洗えるようになっています。原料の節約、環境中に排出後の有機汚濁のことを考えたら、どちらが環境に良いかなんて決め付けることはできません。
消費者のバランスの取れた選択(洗濯?)が必要です。
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地球と生きる「緑の化学(グリーンケミストリー)」
今問題になっている環境問題を、新しい科学技術によって解決しようとする試みが行われています。そうした「環境にやさしい」科学を、この本では「グリーンケミストリー」と呼び、いろいろな企業や研究機関の開発した新しい技術を紹介しています。
意外なことに、悪い洗剤の代名詞のように考えられている「アタック」がこの本に紹介されています。具体的な商品名は書かれていませんが、花王に確認したところ、この本で紹介されている「新しい技術による洗剤」はアタックのことだということでした。

水環境を守り、からだに優しい洗剤「海へ」
アタックが悪い洗剤ではないことがわかっても、なんとなくイメージが悪くて使うのをためらう人がいるのではないでしょうか?
写真の「海へ」洗剤は、アタックを上回るグリーンケミストリーの技術で作られた洗剤です。綿や化繊はもちろん、アタックでは洗えないウールや絹製品も洗うことができます。しかも、使う洗剤の量は、アタックの数分の1なので、水を汚しません。
詳細は、こちらをどうぞ。
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